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福岡高等裁判所 昭和52年(行コ)4号 判決 1981年8月10日

控訴人(原告) 南川伝四郎

被控訴人(被告) 佐賀県知事

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和四七年六月一七日、佐賀県達四七・土二第二四一号の一四九をもつて、控訴人所有の佐賀県佐賀郡久保田町大字新田字二籠一四九八番一、田二三九九平方メートルの一時利用地として、同町大字久富字久富一番、田二四四五平方メートルを指定した処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張及び証拠関係は、左記のほか原判決事実摘示と同一(ただし、原判決八枚目裏一行目の「第一七号証の一、二」を「第一七号証の一ないし三」と改める。)であるから、これを引用する。

(控訴人の付加主張)

1  控訴人が本件処分により多大の損害を得ている反面、本件従前地のうち一時利用地として控訴人に指定された部分を除く部分(指定除外地)は、これから遠く離れた劣等田を集めた土地の一時利用地として指定するために、控訴人に対する指定から除外されたものである。しかも、古賀理事長は右指定除外地を宅地として他に高価に譲渡し、利益を与える旨の誓約書を差入れている。一方において本件指定除外地を失い、他方において劣等田の代りに右指定除外地を得、しかも、これを高価に売却することにより多大の利益を得る者のあることが、公平の原則に反し違法であることは明白である。

2  被控訴人は、いわゆる物納田が生じた理由について種々の主張をなし、本件除外地は農地法上の適格者に売渡し、その代金をもつて負担金に充てることとされていたと強弁するが、右指定除外地は宅地としてスーパー等に売却する意図であつたもので、右主張は言訳にすぎない。

3  被控訴人は本件訴訟が提起されるや、これを自己に有利にするため、農業振興地域の整備に関する法律(以下単に農振法という。)に基づき、久保田町が昭和四七年に定めた農用地利用計画案において、本件従前地が当初非農用地とされていたものを、久保田町長と協議のうえ、同町長をしてこれを変更させ、本件従前地を農振法上の農用地に組み入れさせ、かつ、控訴人の農地転用許可を認めなかつたものである。即ち、控訴人が本件土地をドライブイン用地として利用するときは、その立地条件からして、従前地と一時利用指定地との価値の差が拡大し、照応の原則に反することが明らかとなるので、かかる控訴人に有利な認定を阻止するため、これを宅地への転用が困難な農用地とし、転用を認めなかつたものである。

(新たな証拠)<省略>

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却を免れないものと判断するが、その理由は左記のように付加訂正するほか、原判決に説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決八枚目裏九行目の「古賀了(第一、二回)」の次に「当審証人原口一男」を加え、同九枚目表一〇行目に「八九の二」とあるのを「八九条の二」と改める。

2  同一〇枚目表三行目に「および証人鬼崎昭宣の証言」とあるのを「原審および当審証人鬼崎昭宣の証言、当審における検証の結果」と改め、同一三枚目表二行目の「馬渡万六」の次に「当審証人鬼崎昭宣」を加える。

3  同一四枚目裏四行目の後に「4」として、次のように加える。

「更に控訴人は、被控訴人が本件訴訟を自己に有利にするため、久保田町長と協議のうえ、当初本件従前地が農振法上非農用地とされていたものを、これを変更して農用地に組み入れさせ、かつ、控訴人の農地転用許可の申請も認めなかつたと主張する。

そして、前示各証拠に成立に争いのない乙第三二、第三三号証、当審証人原口一男の証言およびこれによりいずれも真正に成立したものと認める乙第二二ないし第二四号証、弁論の全趣旨を併せると、本件従前地は、現在では農振法に基づき久保田町が昭和四八年に定めた農用地利用計画による農用地区域に含まれており、控訴人からの本件従前地をドライブインに使用するための転用許可の申請に対しても、被控訴人はこれが右農用地区域内にあることを不許可の理由としているところ、久保田町がこれよりさき、昭和四七年に定めた旧農用地利用計画案においては、本件従前地は農用地区域から控訴人主張のとおり除外されていたことが認められるが、それは久保田町において、当時国の補助を受けて土地改良事業を施行中の土地につき、これを農用地区域から除外してもなんら差しつかえないものと解し、土地所有者の申出があれば特に計画案の施行に支障のないかぎり、その意思を尊重して旧計画案からの除外を認めていたところ、その後、農用地区域から除外された土地改良事業実施地区に対しては、国の補助を打ち切る旨の方針が明示されたため、旧計画案によつては、実施中の本件土地改良事業が遂行できなくなるところから、やむなく旧計画案につき県知事に認可申請の手続をしないまま、これを撤回し、改めてその農用地区域から除外される土地の範囲等を変更した計画案を定めるに至つたものであり、右計画案の変更により、本件従前地のみならず、同時に多数の旧計画案から除外された土地が農用地区域に組み入れられたことが窺われ、これらによると、その過程に控訴人主張のような不正の意図があつたとは認められない。

他に格別の証拠もなく、控訴人の右主張はいまだ採用できない。」

二  してみると、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢頭直哉 権藤義臣 小長光馨一)

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